立川市で50年以上続く伊藤養鶏場が作り出す!漆黒の稀少肉「東京うこっけい」

東京都多摩地域を旅する方におすすめしたい『伊藤養鶏場』(東京都立川市高松町3丁目21−4)について紹介している記事です。
烏骨鶏は、卵こそ直売所などで見かけることはあるものの、肉は一般市場に出回ることがほとんどありません。
それは単純に烏骨鶏の数が少ないこともありますが、食材としては一般的になかなかなじみのない真っ黒な見た目をしていることがあるかも知れません。
しかし実は烏骨鶏の肉は栄養価が高く、油脂分は通常の鶏肉の半分程度。ヘルシーで味わい深い、素晴らしいお肉なのです。
今回は、他の追随を許さないほどのこだわりを持って育てている、『伊藤養鶏場』の「東京うこっけい」と、烏骨鶏肉を食べてみたい方のために、そのお肉を使用したラグーソースが人気のイタリアン『カーサ・ディ・カミーノ』をご紹介します。
本物の烏骨鶏とは「東京うこっけい」

足が黒く5本指が純血系統の烏骨鶏の証
烏骨鶏は綿毛のようにふわふわとした羽根を持つ、鶏の一種で、日本には江戸時代に中国から渡来したといわれています。
マルコポーロの「東方見聞録」でもその美しく愛らしい烏骨鶏を「東洋の珍鳥」と記しており、見た目の可愛さだけでなく、栄養価の高さにも価値を見出さされ、漢方薬としても長らく利用されてきました。
しかし烏骨鶏は一般的な鶏と比べて非常に産卵数が少なく、個体が増えにくいことからも、烏骨鶏は貴重な鶏として珍重されてきた歴史があります。
そんな烏骨鶏の産卵数を増やし、ブランド鶏として活用していこうと研究をはじめたのが東京都農林総合研究センター(旧・東京都畜産試験場)でした。
烏骨鶏の中から卵数の多い丈夫な個体を選び抜き、それを掛け合わせていくことで、烏骨鶏の純血を保ったまま、約3倍程度まで産卵数を増やすことに成功します。
そうして誕生したのが「東京うこっけい」です。東京都の研究技術が生み出した、何処よりも「本物」の烏骨鶏であるとも言えるでしょう。
伊藤養鶏場の「東京うこっけい」が世に羽ばたくために

伊藤養鶏場 代表の伊藤彰さん
「東京うこっけい」を飼育する養鶏場は東京都畜産試験場のある青梅・多摩地域の周辺に何軒かありますが、中でも『伊藤養鶏場』は、独自飼料配合や飼育環境などこだわりを持って東京うこっけいの飼育をしています。
東京都・立川市で50年以上も養鶏を続けてきた『伊藤養鶏場』は、卵の販売を中心に、東京都の試験場が交配した烏骨鶏の原種に近い品種の「東京うこっけい」や純国産鶏の「もみじ」の卵と食肉を、また食肉用として「東京しゃも」などを取り扱っています。
小規模ながらも実直に手間暇かけて良い卵をつくるという先代の思いを継いで、現在は婿養子となった3代目の伊藤彰さんが『伊藤養鶏場』の運営にあたっています。
結婚を機に全くの異業種から畜産業へと飛び込むことになったという伊藤さん。ゼロからのスタートで、養鶏業を引き継ぐというのは並大抵の苦労ではないことは容易に想像できます。
今でこそ安定して運営にあたれるようになってきたそうですが、時には壁にぶつかり、時には大胆に改革を行い、と日々試行錯誤を重ね、健康で美味しい鶏を育てること、そして養鶏場を健全に運営していくことに真摯に向き合ってきました。

鶏が快適に過ごせるような環境を整え、成長段階に合わせた飼育をすることでよりコンディションの良い鶏を育てる技術を見出し、飼料で卵の味を高める研究を重ねました。
その結果、産卵数も一般的な東京烏骨鶏をはるかに超え、質の良い卵を安定的に作り出すことができるようになりました。
さらに卵や鶏自体の使用目的に合わせて飼料を配合して、卵のその先をイメージした鶏の飼育をデザインすることで、伊藤養鶏場ブランドの「東京うこっけい」を生み出しました。

こうしてできた『伊藤養鶏場』の「東京烏骨鶏の卵」は販売店スタッフが食べたことをきっかけに口コミでひろがり、リピート客が増えました。その後、販売店では開店前に行列ができ、あっという間に売り切れるほど人気の卵となったそうです。
他の追随を許さないほどのこだわりを持って育てた、『伊藤養鶏場』の「東京うこっけい」や「東京しゃも」は日本橋人形町にある老舗の鳥料理店『玉ひで』やフランス料理の巨匠『ミクニ』の三國シェフに愛され、メディアにもたびたび登場することとなります。
「極上の卵」が生み出される養鶏場へ──

『伊藤養鶏場』へお邪魔して、実際に東京烏骨鶏のいる鶏舎を見学させてもらいました。この鶏舎では東京烏骨鶏とモミジという2品種の鶏を飼育しています。
まず到着して驚いたのは、家畜飼育特有のにおいがほとんど感じないこと。保健所にも模範的であると太鼓判を押されるほど衛生管理を徹底していて、鶏にも人にもストレスの少ない環境を保っているそうです。
通常は都の施設より仕入れる雛鳥を、自社の卵を孵化させて、完全な雛からの飼育を行っています。繊細な烏骨鶏の雛は少しのストレスで死んでしまったりするので、そのストレスを軽減するためにも、衛生管理は重要だと考えています。

東京烏骨鶏の体調をみながら餌を与える
鶏の飼育で最も重要なポイントが餌です!
『伊藤養鶏場』では東京烏骨鶏専用の飼料をベースに、鶏の成長状態や季節に応じてそれぞれに独自配合した餌を与えています。雛の時から餌の調整をしているため、しっかりとした体の健康な良い鶏へと育つそうです。
健康な鶏であれば、食べた餌の栄養を存分に吸収し、卵へと届けることができます。産卵数も安定しますし、餌の配合をコントロールすることで卵自体の味わいや色味も狙ったものを作り出すことができます。

鶏の品種や月齢ごとに餌も様々 美味しそうな香りです
東京烏骨鶏の中でも「極」という卵を産む成熟した鶏の餌は、多い時だと20種ほどブレンドすることもあるのだとか。その餌は香ばしいよいかおりがしていて、私たちでも食べれるのではないかと思うくらい美味しそうでした。
真っ黒の烏骨鶏の肉

卵からブレイクした「東京うこっけい」ですが、現在は卵で培った生育段階ごとに合わせた飼料の配合技術を応用し、食肉の生育販売にも力を入れています。食肉として育てているのは卵を産まない雄の烏骨鶏で、140日ほど生育した後、若鶏として出荷されます。
烏骨鶏の肉をみたことがあるでしょうか。漆黒の皮と、少し黒みがかった肉が特徴的で、その姿を見たら抵抗感を感じる方がほとんどではないでしょうか。
見た目のインパクトがかなりありますが、烏骨鶏の肉は栄養価も高く味も良いので、中国や韓国では昔から特別な食べものとして珍重されてきました。


この肉の価値を伝えたいという伊藤さんの思いが伝わり、2019年には『玉ひで』のプロデュースの元、大規模なイベントでの販売が叶いました。東京うこっけいの肉と卵を使用した「烏骨鶏なま掛け親子丼」の誕生です!
老舗である『玉ひで』の味で炊いたそぼろごはんに、小ぶりながら濃厚な旨味が凝縮した東京うこっけいの卵を落とします。
混ぜ込むことで烏骨鶏のそぼろがほかほかのごはんと卵と一体になって丼が完成します。そぼろ状に調理加工することで、皮の黒さも気にすることなくいただける逸品となりました。
イベント終了後も『伊藤養鶏場』ではレシピを引き継ぎ、現在直売場で販売されています。東京うこっけい卵を落としていただくことで味が完成するそぼろですから、ぜひセットで試してみて下さい。
烏骨鶏を食べてみたい

「東京うこっけい」の食肉は、一般売りしていません。食べてみたいと思っていただけたなら、オススメのお店を1軒紹介させていただきます。
JR・国立駅から徒歩数分に位置する『カーサ・ディ・カミーノ』は、シェフの川上春樹さんは地元・多摩地域の食材を中心に、自分の足で探したこだわりの食材を使い、本格的なイタリア料理を提供しています。地元のお客さんに愛される住宅地の隠れ家イタリアンです。
川上シェフと『伊藤養鶏場』の出会いは、お店のシグネチャーでもあるカルボナーラを探していたことからでした。地域の養鶏場を何件か訪問する予定が、1軒目の『伊藤養鶏場』で卵に魅了されてしまったといいます。そして『伊藤養鶏場』の「東京うこっけい」に出会いました。

「東京烏骨鶏の煮込みソース 鶏肉のミートソース 1900円」
「東京うこっけい」だけで作った贅沢なソースです。烏骨鶏をまるごと煮込み、肉や骨からしっかりと旨味を抽出したあと、皮は刻み、肉は裂きほぐしてソースに戻します。
一般的に烏骨鶏の肉は通常の鶏肉の半分程度しか脂肪がありません。柔らかく煮込むことで脂の重たさやべたつきのないソースに仕上がりました。
ホロホロとしたお肉は口当たりがふわりと柔らかく、脂肪の少ない肉とは全く感じられません。味わいは深く穏やかな旨味がじんわりと広がります。
パスタはリガトーニですが、日によって変えることもあるそう。この一皿に『伊藤養鶏場』の「東京うこっけい」のこだわりと、シェフの技術がこもっていると感じました。
■こちらでもオススメの観光地・お店などを紹介しています!
オフィシャルサイト:https://tama-kankou.tokyo/
Instagram:https://www.instagram.com/imadekakerutama/
*取材・文・撮影:スダカエー
MAP
- 伊藤養鶏場
- 日本、〒190-0034 東京都立川市西砂町1丁目67−7 GoogleMapで見る
*この記事は2023年2月時点の情報を基に作成しています。
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※本記事は、2023/03/03に公開されたものです。記事内容は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。