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【岩手県大槌町】清き湧水が紡ぎ生まれた「源水 純米吟醸」《前編》

岩手県

岩手県大槌町で生まれた酒・酒造りについて紹介している記事(前編)です。新銘柄のお酒「源水 純米吟醸」について詳しくレポートしています。

足を運んだのは『岩手県大槌町』

西を見れば、日本百名山『早池峰山(はやちねさん)』も連ねる『北上山地』。また、東の太平洋側を見渡せば、『三陸リアス式海岸』。


雄大な自然に囲まれるここ『大槌町』で、「ぜひ飲んで欲しい酒ができた」との連絡を受け、東京から新幹線に乗り込みました。

新しく生まれたお酒の銘は「源水」

「源水」という酒名は、全国でも稀に見る、清らかな湧水が流れる大槌町源水地区内の『源水川』から。


魚料理の消費が捗るだろう純米吟醸酒「源水」は、この土地だからこそ生まれた酒なのだと、実際に『大槌町』に足を運んで強く感じた次第です。

『大槌町』だからこそ生まれた酒・酒造りを、前後編の2回に分けてご紹介したいと思います。

生命を育む、清き湧水

実際の酒造りに触れる前に、『大槌町』という場所・土地について、もう少し詳しく見ていきましょう。うまい酒が造られる場所には、“必然”があるからです。

2011年3月に発生した「東日本大震災」で甚大な被害に見舞われた『大槌町』は、岩手県宮古市〜牡鹿(おしか)半島までの『三陸リアス式海岸』の南部に位置しています。


いわゆる『三陸』は、「千島海流(親潮)」と「日本海流(黒潮)」とがぶつかる世界三大漁場の1つ。この地域で水揚げされる海産物は、ひとえに「三陸産」と呼ばれることが常ではありますが、厳密には「大槌産」であるというケースは少なくありません。

しかし、『大槌町』にもたらされる恵みは、海からだけではありません。町内面積の大部分を占める豊かな緑、大地からも大きな恩恵を受けています。

「ジビエ」が楽しめるのもこの土地の魅力のひとつ。

三陸海岸の内陸部に広がる『北上山地』。この落葉広葉樹が広がるエリアでは、鹿の餌となるドングリなどが豊富に実ります。ちなみに、町内に鹿がひょっこり顔を出すなんてこともあるのだそう。


それらを育てるのは、もちろん「水」です。



山間部に降り注いだ雨水は、何百年もの長い歳月をかけ、ようやく地表に湧き出てきます。地中を流れる間に不純物は濾過され、清き水へと浄化されていくのです。


その湧水はやがて『大槌川』という名を宿し、また、その伏流水は『源水川』という名で、地域住民の皆さんに親しまれてきました。

「『源水川』は、その生態系も本当に素晴らしいものなんです。」


そうおっしゃる大場 理幹(さとき)さんは、大槌町内に在る『東京大学大気海洋研究所』に籍を置き、湧水における生態系の研究や調査をされています。同時に、『源水川』での生き物観察会などを通して、子どもたちにその素晴らしさを伝える活動にも積極的に参加されています。

この『源水川』の特筆すべき点は、水質の高さ。汚濁に弱く清流でしか花をつけない希少植物「梅花藻(バイカモ)」や、天然記念物に指定されている「淡水型イトヨ」が見られることが、そのなによりの証拠です。これら希少な植物や生物が見られるのは、日本全国を見渡してもほんの数カ所しかないのだそう。


かつては、住民の皆さんに飲み水や生活用水として使われていた『源水川』の湧水。この川に対する親しみや思い入れが強い方は、数多くいらっしゃいます。一方で、そんな時代を知らない若い世代との間には、「(思い入れの大きさに)ギャップがある」と。

「新銘柄のお酒「源水 純米吟醸」を通して、若い世代にもこの「湧水」がいかに素晴らしいものなのかを知ってほしい。」


それは、子どもたちに湧水の素晴らしさを伝える、大場さんの強い願いでもあります。そして、「源水 純米吟醸」の原料となる米、酒米「吟ぎんが」を作られている方も、大場さんと同じ想いを持たれた方でした。

大槌の水で育つ酒米「吟ぎんが」

酒米「吟ぎんが」は、岩手県が誇る「酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)」です。


「酒造好適米」とは、読んで字のごとく「酒造りに適した米」のこと。私たちが普段主食としている食用米とは性質が異なります。

「吟ぎんが」は寒さに強く、粒が大きい。なおかつ、心白(白濁して見える澱粉の塊)の発現率が高く良質であることが、大きな特徴として挙げられます。


これらの特徴は酒米として高いポテンシャルを有していることを示しており、岩手県の奨励品種(1999年〜)に採用されています。

新銘柄「源水 純米吟醸」に使う大槌産「吟ぎんが」を育てたのが、佐々木重吾さん佐々木さんの家はここ『大槌町』で代々農家を営んでおり、佐々木さんご自身はなんと15代目にあたるのだそう。


大槌で育ち、いまでは大槌の農業を支える、今回の酒造りのキーマンの一人です。

佐々木さんが酒米を作り始めたのは、いまから19年前(2003年)のこと。


「『浜千鳥』の新里社長とは気が合ってね。」


同じ岩手県内に構える酒蔵『浜千鳥』の新里 進社長と偶然の出会い。同い年のおふたりはすぐに意気投合し、“純岩手”の地酒造りが始まりました。

佐々木さんはおっしゃいます。


「ここで出来た酒米で造った酒は、味わいが柔らかくなる。」


「同じ「吟ぎんが」を使っても、酒の味が違うように感じるんだよ。」

佐々木さんの水田で育った大槌町産「吟ぎんが」と、同じ岩手県内で育った別の「吟ぎんが」。

成分の分析結果が示す値は、ほぼ同じ。

酒を造る工程も同じ。

でも、「できた酒は不思議と違った味わいに感じる」のだそう。

「やっぱり水のせいなんじゃないかって。」


何百年にも渡って地中を流れ、やがて『大槌川』として私たちの目の前に姿を現わすその清き水で育てられた大槌産「吟ぎんが」。それを使って造られたお酒のおいしさは、数値には表れない、私たちの舌でこそ感じることのできる自然の恩恵と言えるのかもしれません

ちなみに、乾燥させた酒米の粒の中には、約10%ほどの水分がまだ残っているのだそう。佐々木さんの「吟ぎんが」は、これが『大槌川』の水です。そして、それと同じ水、地下40mの深井戸から汲み上げられた湧水を使って作られたのが、「源水 純米吟醸」です。


「源水 純米吟醸」を口に含んだ時に感じる柔らかさ、醸し出される円みのあるやさしい旨味は、この自然の調和が根底にあるからこそと思えてなりません。

新銘柄「源水 純米吟醸」が生まれた酒蔵へ

新銘柄「源水 純米吟醸」の酒造りを担当されたのは、まもなく創業100周年を迎える酒蔵『浜千鳥』


そう、かつて佐々木さんに酒米造りを依頼した新里社長が経営されている酒蔵です。

新銘柄「源水 純米吟醸」はここでどのようにして生まれたのか ──


次回《後編》は、酒造りの現場からスタートします。

>>後編はこちらから

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*この記事は2022年9月時点の情報を基に作成しています。

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※本記事は、2022/11/02に公開されたものです。記事内容は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。

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